そのまま
夜桜の精がいるとしたら。
どんな姿をしているのだろう。
うなじも艶やかな、「バカをお言いでないよ。」とか言いそうな、いなせな姐さんか。
(お、おけいさん?)
はたまた、すべてを悟ったような瞳を持つ、性別不詳のお子様か。
(ゆ、油化さん?)
割といっぱいいっぱいの日々が続いた頃に、春がやって来て。
円山公園のしだれ桜を、ぼへーーっと眺めていたことがある。 夜に。
「あ~~ぁあ。どうすっかねぇ、これから…。」
なんとはなしに頭でそんなことを考えていたら、桜の枝の隙間から、こんな声が聞こえたような気がした。
「まぁ、なるようになるさ。」
気がしただけ、です。
正気です。
正気です。
しかし二十歳目前の私に「待つ」ということを教えてくれたのは、
他でもない、あの時の桜だったと、今でも思っている。
だから私は夜桜を見るたびに、その事を思い出し、何となく礼を言うのだ。
今の私は、待つも何も、何もしとらんのぅ。 …しみじみ。
……み。
水をやろうかな、植木に…。
しおれて…