けいよい日記

キングオブ暇な私の、心の琴線

なにくそくん

三陸界隈に出張してきた旦那が、土産だといってA4の紙を一枚、私に差し出した。

…これが土産って、ほぅ、ケンカを売っているつもりか、この私に。

と思いつつ。
旦那のセンスを信じ、その紙切れに目を移す。

それはパッと見、社内の連絡事項でも書いてあるかのような、味も素っ気もないにもほどがあるといった、黒字ゴシック体であった。


が。


その題名が。



「……『なにくそくん』?」


『社団法人川井村産業開発公社は「特産品開発と製造、販売」「雇用の場の確保」から通年型産業を目指し昭和61年設立しました。……』




「なにくそくん」と「社団法人川井村産業開発公社」 

…話が見えないのですが……。


旦那を見ると、まあ読めと顔がいっている。
仕方ない、読むか。
しかし正直、読む気のしない見てくれだ。

がんばって読み進めると、どうもこの第三セクター「社団法人川井村産業開発公社」が、何かをやるにあたって「どうせうまくいく筈がない」といった周囲の意見に、弱腰になった時期があったようで。



『当時の事務局長は運営に危機感を感じると共に職員の気持ちを表すことを考え、モチベーションを高める意味から「全員で、なにくそ頑張ろう~」の意味を込めて作ったお菓子が「なにくそくん」です。……』



…「なにくそくん」って、 食べもんかいっっっ。



それは「なにくそ」ってより、「やけくそ」だろう。




が、彼らは本気で「なにくそくん事業」に立ち向かったらしい。

『当初は人間の排出物を型取ったお菓子を計画しましたが……』


こらこら。


『あまりにもリアルすぎることから身近に居る動物の物になりました。……』


…落ち着くところ間違ってませんか。
結局「モノを型取る事」は、やめなかったのか。



この「なにくそくん」、発売と同時に物議を醸し、果ては川井村の議会でも取り上げられた、とある。
ご年配の方々が多そうな「村」である、当然、否定的な意見が多かったようだ。

「人間が口に入れるお菓子に、何という名前を付けるか…けしからん」

もっともである。


が、やはり今の世の中、インパクトが肝心。
「なにくそくん」は、マスコミにも取り上げられ、「全国珍菓子コンクール」では「銅賞」に輝いた。

全国珍菓子コンクールの是非は、この際置いておくとして、銀賞は奈良県の有名な「鹿のフン」、金賞は島根県の「大仏の屁」だったそうだ。

「大仏の屁」

…「ぱふっ」とした食感を楽しむのだろうか。 というか、楽しめるのか?



まぁそれはともかく、そうして一歩一歩村での存在を固めていった「なにくそくん」、今では川井村の名物として愛されているらしい。



なにくそ、という気概から生まれたお菓子「なにくそくん」。

「運がつく」とか「モチベーションを高める」などという付加価値も(勝手に)付けられ、受験生や高校球児への土産として買う人もいるそうだ。


何よりである。


めでたし、めでたし。




…がしかし、ここからが、この「A4の紙」の醍醐味だ。

さらに「紙」は語る。

『しかし、失敗例も多々あります。「おみやげとして差し出したら叱られた。」とか「受験の娘にプレゼントしたらフタを開けた途端に自分目掛けて投げつけられた。」などありますので、シャレの判らない方には十分注意して差し上げてください。……』

この細部に行き渡る気配り、民間もびっくりだ。
力の入れ方が半端でない証拠と言えるだろう。

そして「紙」は、こう締める。

『最後に「なにくそくん」を購入して、宝くじ、競馬等であたったという方はおりません。もし、おられましたら当店までご連絡下さい。 道の駅・区界高原』



道の駅・区界高原。
行ってみたくなるじゃないか。



で、「なにくそくん」。
どんな味だったとか、写真、とか、出したいところなんですが。
旦那…、買ってきてないんです。
「紙」だけ持って帰ってきといて。



…そりゃないだろうよ、だーりん。



追記
「なにくそくん」は、さだまさしのコンサート会場で買えることがあるらしい。
うーん、まさし、グッジョブッ(good job)。

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