けいよい日記

キングオブ暇な私の、心の琴線

出す。


 
さて、私が長年、その意味の根本を間違えていた釘抜き地蔵。
 

 

まさにその場所に迷いながらも辿り着き、中の様子を窺っていたときのことです。



いつまでたっても、お賽銭のさの字も入れそうにない私に、お地蔵様がお怒りになったのでしょうか。
なんだか急激に腹具合が悪……い、いやそんなまさか気のせいだろう、きっとそうだろう、うっく…!



これは…!



小さな釘抜き地蔵で下痢警報が発令しました!

 
危険危険!
大変危険!

 

腹は、警戒レベル5のところのくらいを主張してきております!

と、とりあえず、出せば何とかなるやもしれないっ、って感じの腹具合ネ。




トイレ…

 

と、トイレ……




地味目に腹を抱えながら辺りを見回すと、ありました、トイレ。
当然のように外トイレですが、ありました。
異様に風通しの良いトイレですが、そのおかげか臭いはありませんし、古いけど綺麗です。




仕方ない、ここで一発、戦いを…。



ということで、私はトイレに入りました。
ぬーは、見張り役です。


狭いトイレなので、しゃがむとき頭がドアにぶつかりましたよ、チキショゥ。

 

が、そのトイレには、もっと重大な欠点がありました。




ドアが曇りガラスなのです。


まぁ、そのまま姿が見えるって訳ではないのですが。



「今、力んでる…」

 

「今、トイレットペーパーに手を…」



なんてことは、全てお見通しなドアなのです。





でも、そんなことは、どうでもよかった。

それくらい結構な下痢警報だったのです、トイレさえあれば、それでよかった、が、しかし。

 

このトイレ、さらに輪を掛けて欠点がありました。



というのも、ドアの向こうは、男性尿用便器なのですね。

 


まぁ、ちょいと昔の型ですわな、よくありますわな、古い公衆トイレで。

そこを通らないと、ウンコ便器に近づくこともできない、男女共用とは名ばかりのアレですわよ。



その重要な、男女を隔てる唯一の境界線が、お見通し曇りガラスドア。



ですので。



もし、♂の誰ぞが尿をしに来た場合。


こっちの動きがお見通しなら、向こうの動きも、全部まるっとお見通しなわけですよ。

見通したくもないのに、お見通し。




下痢で苦しんどる最中、見ず知らずの男の尿の模様など知りたくもないのに。

それどころじゃないのに。

見通せちまうよ、まったくもぅ。




どうか、誰も来ないで。

 

祈るしかありません。

 

神様どうか、この私を下痢に専念させてくださいまし…!







……釘抜き地蔵様は、その願いを聞き入れてくれませんでした。

お賽銭、後でちゃんと入れるつもりだったのに…聞いてくれませんでしたとさ……。





無情にも、向こうから砂利を踏みしめる音。

どうにもこうにもオスな感じを醸し出しながら、音は近づいてきて。

残念ながら、トイレの前で止まりました。


そして。


無言でうなる私に気付いているのかいないのか、躊躇なく尿便器の前で仁王立ちになる、

どっかのオッサン。

 

いや、確認はしておりませんが、あの足音はきっとオッサンと呼ぶにふさわしい人間に違いないのです。




曇りガラスなので、大体のことは分かりますよ。


中肉中背。

着ている服は、上下紺系。

年の頃は恐らく…って、もうええわ。


あ~あ。

 
見たくもないのに、オッサンの足の開き具合とか、分かっちゃいますよーだ。
あ、今チャック降ろしましたね、あ~あぁ。
次はチョロチョロとした音が聞こえるのでしょうねぇ、えぇえぇそうでしょうよ、
そうでしょうよー…。



……。



……。



……。



……んまだかいっ!

 

まだ出んのかいっ!



 

 

 

……チ

 

 

ん?

 

 

 

 


………チヨロチyo

 

 

チヨロチヨロチヨ……チょ…






……。


……まぁ、寒いですもんね……いろんなもんが縮こまるってもんですよね……。



 

 

非常に不本意ながらも、なんだか妙な連帯感を持ってしまった私。



が、この私が、せっかく連帯感を持ってやったというのに。

そのオッサンは出すだけ出すと、さっさと去っていきよりました、私を残してっ。



よう分からんが、いろいろ大変に不本意じゃいっ、おのれぇっ。

手ぇのひとつも振らんかいっ。



ばばを出しながら一瞬イラッとしましたが。

しかしオッサンの尿量の少なさが心配でもある、それがトイレの縁。



だって明らかにスッキリには程遠い量なんだもの。


あんなので大丈夫かしら、オッサン。

またすぐ、どっかで行きたくなったりするんじゃないかしら、オッサン。


まぁ、一応の満足感は得られたのでしょうね、よかったね。



 

よくわからねぇけど、お大事に。

 






それよりなにより、私の下痢…。

 

そう、人の尿より自分の下痢…っ!




とりあえずのピークは脱したようなのですが、私もスッキリとは程遠い状態でした。

 

が、帰らなければなりません。




結構な距離を、自転車で。 



なんで私は自転車で来たんだろう…って思うのは、こういう時ですよ、えぇえぇ。

 

できるだけ店の多そうな、トイレを借りられそうな道を選んで、ハゥッ…選んで、フゥッ…選んで…



なんとか、おうちに着きました。




みなさん、応援アリガトウ。



やっぱ、トイレは我が家に限る。









 




まぁ、大体こんな感じだったんですわ。

 

釘抜き地蔵で下痢なお話。








…カァッ。
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