けいよい日記

キングオブ暇な私の、心の琴線

アクヘキ。

いけないなって思っちゃいるんですが、ついやってしまうこと。

それも、夫婦でやっちまうことが、我々ぬけ夫婦にはあります。


それは。

 

レストランで食事をしているとき、お隣の会話に、つい、つい、つーい、耳を傾けてしまうこと。


いっ、いつもじゃないですよっ。
内容次第ですよっ。
我々の心の琴線に触れるものだけですよっ。

 

 


では、どのような話に、琴線がポロロンと触れるのかというと、例えば。

 

ちょいと日常的でないカップルなんて、オススメです。

 

なんだか二人で、むっつりと黙り込んでるカップルがいたりします。
皿の上には、一切れだけ残ったピザが、カピカピになっております。
店員さんも、次の料理を出すタイミングに、さぞかしお困りのことでしょう。

 

ああイケナイ、そのうち彼女の方が泣き出しましたよ。


そんな時の私の心の中はというと。

 

ああ、泣いてるよ、泣いちゃってるよ。
カァ~男ってぇのは、こういうとき、なーんも言えん。なーんもよう言わん、なっさけない。
あっ、なんだいそのめんどくさそうな顔。アンタが泣かせたんじゃろうがね、ちゃんと収拾つけんさいよっ。


などと。


ラム肉の最後の一切れにフォークを突き刺しながら、耳ダンボでございます。

男の不甲斐なさに眉間のシワを寄せ、必要以上に左頬を膨らませて肉を咀嚼しながら耳ダンボでございます。



けっ。

情けない。




と、そこで。

 

彼女が泣いてる理由が分かったりします。
魚の目がイヤ、なんて事だったりします。

 



オイ。
姉ちゃん、なに幼稚園児みたいな事言ってんだい、えぇっ?
そんなこと言って可愛いって思ってもらえる歳じゃないでしょう?もう20代後半でしょう?その肌。
カァ~やだやだ、女ってのは、どうしてこう、いつまでたっても自分が可愛いと思シワを数えろや、シワヲッ


などと。



いつもなら食べないクレソンに手を伸ばし、山羊のように咀嚼しながら、耳ダンボでございます。
ヴメ"ェェェェェェェェ------ぇ。





 

なぜでしょうね。
こういうときって、甘いモノが欲しくなるもんなのですね。


すいませーん、デザートのメニューくださーい。
飲み物はカプチーノでー。


ってな感じでございます。

あ。


いくら丁寧語を使っても、この陰湿さは隠せませんか? 
あぁ、そうですか。
それで結構でございます、その場しのぎの綺麗事になんて興味ないの、アタシ。





いやいや。

 

こんな飯が不味くなるようなカップルばかりじゃないのですよ。
実にすがすがしい、爽やかカップルも、もちろんいらっしゃるのです。

というか、我々が好きなのはむしろ、そういうカップルの会話なのです。

基本こんな我々ですので、ちぃとでもご相伴にあずかりたいではないですか、

宮崎葵のような爽やかな息吹を。


先日、隣に座ったカップルは、まさにそんなお二人でした。



最初に、おや? と思ったのが、お二人がお互いに敬語を使ってらしたこと。
出会って間もない二人のようです。


そして何より、敬語を使うという概念があることからも分かるように、

お二人ともちゃんと礼をわきまえた方。

敬語を使っていても余所余所しいわけではなく、

とても心地の良い距離感で二人の時間を楽しんでおられました。



言葉遣いっていうのは大切ですね。

 

男性の方は、おそらくかなり若い(20代半ば?)のですが、最近よく見かけるバカキムタク系の馬鹿しゃべりではなく、本当にきれいな日本語で。

 

女性の方は、おそらくその男子のなんぞの先輩にあたるようで、社会経験を積んでいる賢い女性、というのが言葉の端々に見てとれました。

もうあんたたち結婚しちゃいな!ってくらい、いい感じっこ出てるカポーでしたよ。


そんなこともあって、ついつい二人の様子が気になる、中年夫婦ぬけ。

人というものは、自分にないものを求めるのです、求めちゃぁいけませんか、ねえ神様!




そんな腐ったぬけにお構いなく、カポーの会話は爽やかに続きます。

どうも二人きりで会うのは初めてなよう。
 
ウソか誠か、男子の方は今日が楽しみで仕方がなかったようなことを言ったりして、
あらまぁもぅホントにねぇ♡
飲食のバイト経験があるらしく、来た料理を女子の方に丁寧にサーブなんかしてあげちゃったりしておりますよ、あらまぁもぅホントにねぇ♡



で、そんな流れでレディファーストの話に花が咲き始めました。

女子が聞きます。


「向こうでは、子供でもレディファーストなんてするの?」



はい、お気付きになられましたでしょうか、そろそろ敬語じゃなくなってきております。

打ち解けてきたねぇ、打ち解けてきましたねぇ、フンフン♡



で、さらにお気付きになられましたでしょうか、なんと男子の方、キコクシジョでした。

「向こう」とは、アメリカかどこかのようです。
というわけで、これから彼のことをキコクシジョ君と呼びますね。

 

ねえ、どうします?本当に…。
最近よく見かけるバカキムタク系の馬鹿しゃべりではない男子は、日本で生まれ育っておりませんでした…。
まあ、そんなちょいと心の折れそうな事実も判明しつつ…。



ちなみに、子供でも一応レディファーストするそうです。

ドア開けたりとかは普通にするそうです。


見習え。

見習え、日本男子。

というか、あのキコクシジョ君の、美しい「気遣い」というものを学びたまえ。
馬鹿なふりしてりゃ可愛がってもらえるなんて勘違いは捨てておしまい!古いんだよ!



で、カノジョさん、もう女子の方はカノジョさんにしちゃいますよ、カノジョさん。

せっくすあんどざしてい? らしき話をし始めました。
私、見たことなかったんですけど。


ありがとう…結末まできっちり教えてくれて、ありがとう…。


結局、あの主人公、結婚するんだー、よかったねー。
図書館がドタキャンで思い直して勘違いしてまたどこかで式あげてって、よかったねー

めでたしめでたしー。

キコクシジョ君の方も、「わー、見てみたーい。」って言っております、
ホントカ?ホントニオモッテンノカ?


共通の知り合いの話もしておりました、大盛り上がりでした。

 
キコクシジョ君は言います、「超うけるー。」ホントカ?ホントニオモッテンノカ?
 
てか、そこで君から若者言葉が出てくるなんて、おばちゃん悲しいっ、悲しいわよ!



そこらで、いつの間にかまた、「向こう」の話に戻ってました。

今でも英語は話せるのか、的な。
 
中学生くらいの時に日本にやってきたらしい、キコクシジョ君。
今でも英語話せるけど、だいぶ忘れちゃったようです。

 

べらっべらに話せるものとして対応されると、ちょっと困ることもあるんだって。
謙遜も忘れません、この人は。


そんな彼に、カノジョさんが問いかけます。


「ねえ、英語でゴボウは何て言うの?」

「えっ?」


…カノジョさん…案外、容赦ないね、アナタ。


「うーん、ゴボウ…向こうにあったかなぁ…言葉はあるんだろうけど…。」



バーダック…!
悟空の父さん、バーダック…!




もう少しで無粋にも二人の会話に首を突っ込むところでした、あぶねぇあぶねぇ。



あ、知らない方に説明しておきましょうか。

バーダックとは、ドラゴンボールの主人公、孫悟空の実の父親の名前です。
サイヤ人である孫悟空の本名は、カカロット
ニンジンの英語である「キャロット」をもじった名前なのですね、サイヤ人のサイヤは、野菜なのです。
その星の王子であるベジータは、王子らしく、野菜の英語、ベジタボゥから来ております、ベジータ
 
だから悟空の父ちゃんはゴボウなのです、その名前が、バーダック

 


そして、ゴボウを言い倦ねたキコクシジョ君に、カノジョさんが追い打ちをかけます。


「じゃあ、キンピラゴボウは?」


そりゃないだろうよ、お嬢さんっっっ。


ゴボウが分からないのに、キンピラゴボウなんて!

てか、キンピラゴボウは、向こうでもキンピラゴボウでしょうよ!
柔道がジュードーなくらいなんだから、きっとそうでしょうよ!


「そういうのはもう、作り方とかから説明するしかないなぁ。」

 

キコクシジョ君、一生懸命です。
確かにそうでしょうね、ゴボウを油で炒めて、砂糖と醤油で…って言うしかないやねぇ。



んがっ。
恐るべしカノジョさん。
手を緩めないっ、いっさい緩めなーいっ。


「じゃあ、厚揚げは?」


…アンタ、鬼やね。



私は目だけで、ぬーに聞いてみました。  「厚揚げ、英語で?」

ぬーは、目だけで答えました。      「知るか、そんなもん。」




一生懸命キコクシジョ君、答えます。

 

「あぁ、それももう、工程とかから言うしかないよ、魚のすり身を油で揚げて…。」

 

 


ああ…、違う、違うよ、キコクシジョ君、それはきっと…

 

 

 





さつま揚げ…





そのさつま揚げの件で、私の脳みそは限界に達し、それ以降の会話は頭に入ってきませんでした。




でも笑わなかったよ。

その場では笑わなかったよ、私ら。



褒めて。
 
褒めてよ…!
大変だったんだから…!






ああ。



あの二人、今頃どうなってんだろうな。
うまくいってるといいな。




二人に幸あれ、永遠に。

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