アクヘキ。
それも、夫婦でやっちまうことが、我々ぬけ夫婦にはあります。
それは。
いっ、いつもじゃないですよっ。
内容次第ですよっ。
我々の心の琴線に触れるものだけですよっ。
では、どのような話に、琴線がポロロンと触れるのかというと、例えば。
そんな時の私の心の中はというと。
カァ~男ってぇのは、こういうとき、なーんも言えん。なーんもよう言わん、なっさけない。
あっ、なんだいそのめんどくさそうな顔。アンタが泣かせたんじゃろうがね、ちゃんと収拾つけんさいよっ。
ラム肉の最後の一切れにフォークを突き刺しながら、耳ダンボでございます。
けっ。
と、そこで。
魚の目がイヤ、なんて事だったりします。
オイ。
姉ちゃん、なに幼稚園児みたいな事言ってんだい、えぇっ?
そんなこと言って可愛いって思ってもらえる歳じゃないでしょう?もう20代後半でしょう?その肌。
カァ~やだやだ、女ってのは、どうしてこう、いつまでたっても自分が可愛いと思シワを数えろや、シワヲッ
などと。
ヴメ"ェェェェェェェェ------ぇ。
こういうときって、甘いモノが欲しくなるもんなのですね。
すいませーん、デザートのメニューくださーい。
飲み物はカプチーノでー。
ってな感じでございます。
いくら丁寧語を使っても、この陰湿さは隠せませんか?
あぁ、そうですか。
それで結構でございます、その場しのぎの綺麗事になんて興味ないの、アタシ。
いやいや。
というか、我々が好きなのはむしろ、そういうカップルの会話なのです。
基本こんな我々ですので、ちぃとでもご相伴にあずかりたいではないですか、
宮崎葵のような爽やかな息吹を。
先日、隣に座ったカップルは、まさにそんなお二人でした。
出会って間もない二人のようです。
そして何より、敬語を使うという概念があることからも分かるように、
お二人ともちゃんと礼をわきまえた方。
敬語を使っていても余所余所しいわけではなく、
言葉遣いっていうのは大切ですね。
もうあんたたち結婚しちゃいな!ってくらい、いい感じっこ出てるカポーでしたよ。
そんなこともあって、ついつい二人の様子が気になる、中年夫婦ぬけ。
そんな腐ったぬけにお構いなく、カポーの会話は爽やかに続きます。
で、そんな流れでレディファーストの話に花が咲き始めました。
「向こうでは、子供でもレディファーストなんてするの?」
はい、お気付きになられましたでしょうか、そろそろ敬語じゃなくなってきております。
で、さらにお気付きになられましたでしょうか、なんと男子の方、キコクシジョでした。
ちなみに、子供でも一応レディファーストするそうです。
見習え。
見習え、日本男子。
で、カノジョさん、もう女子の方はカノジョさんにしちゃいますよ、カノジョさん。
ありがとう…結末まできっちり教えてくれて、ありがとう…。
結局、あの主人公、結婚するんだー、よかったねー。
図書館がドタキャンで思い直して勘違いしてまたどこかで式あげてって、よかったねー
めでたしめでたしー。
共通の知り合いの話もしておりました、大盛り上がりでした。
そこらで、いつの間にかまた、「向こう」の話に戻ってました。
そんな彼に、カノジョさんが問いかけます。
「ねえ、英語でゴボウは何て言うの?」
…カノジョさん…案外、容赦ないね、アナタ。
「うーん、ゴボウ…向こうにあったかなぁ…言葉はあるんだろうけど…。」
もう少しで無粋にも二人の会話に首を突っ込むところでした、あぶねぇあぶねぇ。
あ、知らない方に説明しておきましょうか。
そして、ゴボウを言い倦ねたキコクシジョ君に、カノジョさんが追い打ちをかけます。
「じゃあ、キンピラゴボウは?」
そりゃないだろうよ、お嬢さんっっっ。
ゴボウが分からないのに、キンピラゴボウなんて!
「そういうのはもう、作り方とかから説明するしかないなぁ。」
んがっ。
恐るべしカノジョさん。
手を緩めないっ、いっさい緩めなーいっ。
「じゃあ、厚揚げは?」
…アンタ、鬼やね。
私は目だけで、ぬーに聞いてみました。 「厚揚げ、英語で?」
一生懸命キコクシジョ君、答えます。
ああ…、違う、違うよ、キコクシジョ君、それはきっと…
さつま揚げ…。
そのさつま揚げの件で、私の脳みそは限界に達し、それ以降の会話は頭に入ってきませんでした。
でも笑わなかったよ。
ああ。
二人に幸あれ、永遠に。