けいよい日記

キングオブ暇な私の、心の琴線

じっと手を見る カラヴァッジョ 「ゴリアテの首を持つダビデ」

 

あるところに、戦争で大けがをした少女がいたそうです。
その子は2年かかって、やっと車いすに乗れるまでに回復しました。

 

そして、久しぶりに陽の光を浴びようとベランダに出た直後に、狙撃兵に頭を撃ち抜かれて、死んでしまいました。

 

なぜ、病院のベランダに出てきた少女を、その兵士は撃ってしまったのか。

 

その質問を受けたジャーナリストは、「人間は銃を持つと撃ちたくなるものなんだ。」と答えていました。




この絵を見ると、いつも、この話を思い出します。



 

 

描かれているのは、旧約聖書の中に出てくる、ダビデゴリアテの首をとる場面。

話の内容はというと、とりあえず正義の味方が悪を伐つ、という、とてもわかりやすいものですが、聖書の中でも非常に有名なくだりで、絵や像などでよく目にする題材といえるでしょう。



敵であるゴリアテの首を、高々と上げているダビデ

 

他の絵の中のダビデは、誇らしげであったり、ゴリアテの首を憎々しげに見ていたり、するんですが。



この絵は、違います。

 

この絵のダビデは、茫然としています。
 
そして、その表情の中には、微かですが、確かな脅えの色が見えました。  
……私には、ですが。





いろいろ考えたんですが、私の解釈は、こんな感じです。



ゴリアテの首をとったダビデは高揚した。
人を殺したことに対して、あろうことか喜びを感じたのです。
そして、その事実に驚愕し、茫然とした。

 

茫然としつつも、その高揚した気持ち、そしてその喜びそのものに、ひたっている。

 

とても、怖い絵だと思いました。
絵を見て身震いしたのは、後にも先にも、これっきりです。

 

基本的に人間は肉食なのだと、痛感しました。
血を見ると嬉しいものなのでしょう、人間は。

 

それが同族(人間)であれば尚のこと、その喜びは甘いものなのでしょうか。



だから、殺人も戦争も、この世から無くなりゃしないでしょう。
戦争なんて、ビジネス絡みですから尚更です。

 

私達は、やりたくてやっているのです。
 
共食いをする生き物なのです。





気が滅入りますねぇ。





気が滅入った後は、人間の可能性を信じてみようと、もう一度思うためにベートーベンの第九を聞いたりします。

 

MPが150復活します。  エーテル

 

それだけってわけでもないと思うのです、人間って。
共食いもしますが、地球上で唯一、理念に基づいて行動することができる動物だとも思うのです。




あ、そりゃ、蟻だって

 

「よし、いつの日か、この巣をあの山まで広げるんだ、がんばろう皆!」

 

とか考えてるのかもしれませんが。       
……もしそうだったら、ごめんなさいね、蟻。






この絵を見て、自分の手についてる血を、もう一回眺めてみるのは、非常に有意義な作業です。



大事なのは、自己認識すること。
私は、そう思います。






だから私は、選挙に行くぞー!  って、ええ? そんな話?






この絵を見るなら、ドカーンとバカでかい建物が二つ、双子のように向かい合って建っています、ウィーンの「美術史博物館」(双子の片方) へ。



うーむ、やはり画像では、裏の表情までは伝わりません。

 

だって彼は、生きてますから。
ご利用まことにありがとうございます。