直訳
「あら、いま何時かしら。」
けいよいは、いつも使っている目覚まし時計を見るが、その時計は、おあつらえ向きに背を向けている。
「まったく。」
この部屋にも時計が必要ね。
そう思うと同時に、むかし兄嫁にもらった青い壁掛け時計のことを思い出すが、あの時計は残念ながらこの部屋には似合わない。気に入ってはいるのだが。
また楽天で良いのを見つけなきゃ。
青ではない、ダークブラウンのベッドと緑のカーテン、そしてアイボリーの壁に似合う、素敵な時計を探さなければ。
数字が大きく音は静かで、素材はウォールナットの無垢が良いだろう。
だが、ここ最近の度重なる出費で、そんな何千円かの更なる出費が気に掛かる。
この問題は、先延ばしにしてもいい問題のはずだわ。
溜息ひとつで自分を納得させ、けいよいはトイレに駆け込む。
私は、訳本を読むと思考がこうなります。
逐一。
鬱陶しいこと、この上なく。
が、それも終わりです。
読み終わりましたので、「私の中のあなた」。
白血病の姉のために、ドナーとして生まれてきた妹のお話。
設定が設定なので、思わず買ってしまいました。
「生まれてきた」と言っても、遺伝子操作した上でこの世に生み出された存在なのです、妹さん。
さて。
これは許されることなのでしょうか。
話の内容は非常に面白かったです。
だけど、ラストは。
ダイッキライ。
読まなきゃよかった、とすら思いました。
この本が私の家にあるのが嫌、とすら思いました。
この本が私の家にあるのが嫌、とすら思いました。
訳者は、時間をおいてもう一度読んでほしい、と言ってますけど。
ねえ、マリラ。
はたして小説家っていうのは、プロである必要があるのかしらね。
窓をつたう雨のしずくを指で辿りながら、けいよいは、つぶやくのだった。