人は行く。行きたいところへ。
さて。
例によって仕事をする気になれず。
今やらなければ、後で必ず後悔することはわかっているのだが、する気になれず。
今やらなければ、後で自分が苦しむことはわかっているのだが、やる気にならず。
そういうとき、私はもう、仕事しないのね。
後で後悔する方を選ぶのね。
後で後悔する方を選ぶのね。
だって、どっちみち、しないのだもの。
家でだらだらするだけなのだもの。
家でだらだらするだけなのだもの。
だったら、遊んだ方がいい。
というわけで、当てもなく車でぶらぶらさせていただいたんです。
そしたら、ぶらぶらしている間にお腹が空きましてね。
さーて、どこに行こうかとぶらぶら悩んでおりましたら。
「おお、宇治のインデアンカレーぶらぶら気になるな。」
ということにぶらぶらなりましてね。
いざ宇治へ。
行ってみたんですよ。
車で1時間ってとこでしょうか。
車で1時間ってとこでしょうか。
そう、京都と宇治は、決して近くはないのです。
遠くもないけれども。
遠くもないけれども。
インデアンカレーというのは、昔から、本当に昔から京都にあったカレー屋さんです。
場所は三条木屋町。
京都の、いわゆる飲屋街ですな。
あの辺りをうろうろしてて、「あ、インデアン。じゃ入ろうか。」って感じで
寄らせてもらうカレー屋さんでした。
おじさんが、無口でね。
バイトさんがいないときなんて、注文が通ってるのかどうか、
いまいち自信が無くなっちゃうくらい無口でね。
それがまた、心地良かったりしてね。
で、カレー、美味しいんですよ。
さらさらで、さっぱりしてて。
「食後に食べられるカレー」っていう、よくわからないカテゴリーに入れていましたね、我々は。
私が頼んでたのは、いつもコロッケカレー。
うん。
過去形です。
あのおじさんは、お亡くなりになったと聞きました。
で、その後やってくれていたおばさんも体調不良とか。
そんなこんなで、数年前に閉店してしまったのです。
そのインデアンカレーが宇治に支店を持っているということを知ったのは、わりと最近でした。
そりゃあ行ってみたいねえと常々言ってはいたのですが、機会を作らないと行かない場所にありまして。
気にはなりつつ行ってなかったのですが。
その機会が、ついに、やってきたわけです。
行ってきましたよ、車で1時間。
これってねえ、結構すごいことだと思いませんか。
あの無口なおじさん、もういないんだけど。
でも、あのおじさんのカレーが食べたいね、って人に思わせて。
なおかつ、車で1時間掛けてでも行こうと思わせる、そのことが。
しかも、きっと我々だけじゃない。
1ヵ月につき、8人くらいには思わせてそうだもの。
結構--いや、かなり、すごいことだと思う。
おじさん、すごいよ。
うん。
おじさん、すごい。
おじさん、あたしゃー結構、顔、覚えてますよ。
大江健三郎を、ひと回り小さくしたような感じで、なんだかちょっと哲学者風なのよね。
で、あんまし、こっち見ないんだよね。
たまーに、ちらっと見るくらいで、本当に黙々と作ってくれるんだよね。
おいしかった。
いつも、とてもおいしかった。
カレーひと皿、ぼんっと来るだけなんだけど(サラダあったっけ)、なんっか食べ終わった後、
すごい満足するの。
満足というか、安心というか。
鼻で深呼吸しながら店を出る感じね。 うふ~ん♡
わかんないでしょうね。
ぬーは、わかってくれるだろうか?
あの感覚は、なかなか他の店には無いような気が、今更ながら、ね。
なんかこう……不思議な空間でしたよ、あそこは。
飲屋街なんでね、町としては寝てる時間帯なわけです、昼間は。
でも、インデアンカレーは、やっている。
その看板が目に入ると、つい、ふら~っと入っちゃうのです。
胃がカレーって感じじゃなくても、ここのカレーはあんまし関係ないのよね。
で、店に入ると。
おじさんは、年季の入った白い服。
たまに新聞を読んでることもあります、哲学者風にね。
で、人が入ってくるとスタンバイ。
で、人が入ってくるとスタンバイ。
バイトさんが水を持ってきてくれて。
何にしましょうか。
何にしよ、うーんと、えーと、うーん、うぅぅーーーん ……… じゃあ、コロッケ。
一応悩むんだけど、結局コロッケカレーなのよねえ。
ぬーはハンバーグか、たまにカツカレーですよ。
私が食べたい方を、ぬーは頼みます。
私が食べたい方を、ぬーは頼みます。
机は木だったなあ。
古そうな机なんだけど、古い店にありがちなベタベタ感とかは皆無。
待ってる間、つい、すりすりしちゃうのよね。
待ってる間、つい、すりすりしちゃうのよね。
あ、そういえば、店にテレビが無かったような。
ラジオだったんだよ、ラジオ。
そういうところも好きだったんだよなあ。
ラジオだったんだよ、ラジオ。
そういうところも好きだったんだよなあ。
で、カレーが来るでしょ。
私の愛しのコロッケカレーと、ぬーのハンバーグカレー or カツカレー。
で、そのハンバーグだかカツだかの1切れと、2つあるコロッケのうちの1個という、若干不公平感溢れるトレードをしつつ、食すわけです。
で、食べ終わって、お金を払って、ごちそうさまでした、うふ~ん満足満足♡
と店を出るでしょ。
すると。
途端に現実に引き戻されるような感覚に陥るのですよ。
うへぇ暑~、みたいな。
店が特別涼しいわけでもないのだけど。
店が特別涼しいわけでもないのだけど。
なんか、私はよく、店を後にするとき、一度振り向いてたような気がする。
確認しないと、夢だったような気にでも、なってたのだろうか。
お腹の中と鼻の裏では、夢、続いてるんだけどね。
そういえば、おじさんの声、2、3回しか聞いたことないぞ。
1回だけ常連さんと話してるの見て、びっくりしたもんなあ。
でも、やっぱり、会話してても、無口だったね。
……。
うーむ。
思い出すにつけ、不思議なとこだったなあ、あそこは。
うーむ。
食べたいなあ、インデアンカレー。
え?
うん、食べたいですよ。
だって。
無かったんだもん。
宇治のお店、無かったんですもん。
移転したんだか、閉店したんだか、よくわからないけれども。
無かった。
無かったよ。
ねえ、もしかして、夢だったんだろうか。
京都のインデアンカレー全般、夢だったんだろうか。
あのおじさんも、コロッケカレーも全部、夢だったっちゃっちゃっただろうか、んなわけなかろう!
食べたいですよ!
あたしゃ食べたいですよ、インデアンカレーを!
というわけで。
行こうか。
見て。
昔、京都のインデアンカレーで修行した方が、お店をやっているそうです、いえ、やってくださっているそうです。
ああもう。
絶対行く。
姫路上等。