あぁ、谷子。
人妻との擬似恋愛に、うつつを抜かすぺ●る。
だが実は、既に彼女がいたのだった。
最近、ぺ●るの様子がおかしい。
谷子は、洗濯物が回るのをジッと見つめながら、ぼんやりと考えていた。
ぼんやりとしていても、足元からさわさわと、言いしれぬ不安が忍び寄ってくるのを感じる。
これが女の勘というものなのだろうか。
2人の関係は、もう6年。 学生時代からの付き合いになる。
最初から好き合っていたわけではない。
お互いに本命がいたのだが、どちらも成就せず、そばにいた相手と自然に関係を持ってしまった。
そんな始まりだった。
でも、ぺ●るは優しいし、年下の割に大人だ。
一緒にいても全く気を遣わなくてすむ。
それに、共通の趣味もあった。
何となく付き合っているうちに、いつの間にか6年。
特に修羅場もなかったが、2人の間に燃え上がるような気持ちが無かったことも確かだ。
おかしいと思ったのは、この春くらいからだったか。
突然、何も言わずに引っ越してしまった。
「今、どこに住んでるの?教えてよ。」
「いや、家賃が安いところが見つかったから…。月6万なんだよ。」
いくら聞いても、あやふやな返事しか返ってこない。
確かに今まで谷子は、ぺ●るの家に行ったことはなかった。
いつも、ぺ●るが連絡をしてきて谷子の家に来る。
こちらから連絡したことは、あっただろうか。
そういえば、外でデートらしいことをしたのも、2、3度しかない。
それも、近所のスーパーへ夕食の材料を買いに行くとか、その程度だ。
それでも、どこに住んでいるか位は知っていたのに、今回はそれすら教えてもらえない。
「なんで!?」
あの時、もっと問いつめていた方が良かったのだろうか。
でも、嫌われるのが嫌で……いや、自分のプライドが邪魔をして……できなかった。
……いまさら、できるはずもない。
その頃から、谷子は眠れなくなった。