けいよい日記

キングオブ暇な私の、心の琴線

タクシーの中で。

 

私は人見知りです。
 
どのくらい人見知りかというと、ずっと前にラジオにメールを送ってそれを読んでもらえるうえに、司会のアナウンサーと電話でお話が出来るかもしれないというチャンスがあったにもかかわらず、それを
 
人見知りだから。

という理由で断ったことがあるくらい、人見知りです。

 

 

こんな私ですが、タクシーの運転手さん(以下、タクの運ちゃん)と話をするのは嫌いじゃない、というか、むしろ好き、な気がします。

 

まぁきっと、タクの運ちゃん側が、お話上手なんでしょうねぇ。
それに、ネタが新鮮。
紅葉の様子なんかは、タクの運ちゃんに聞くのが一番手っ取り早いのではないでしょうか。

 

そんなこんなで、私はタクシーの中では、いつもより多めに話してしまったりするのです。

 

 

つい先日もそうでした。
 
山口に帰ろうとしていた私は、やっとの思いでタクシーを拾いました。
なかなか見つからないんっすよねぇ…9号線。
 
いそいそと乗り込んで、「京都駅まで」と、運ちゃんに申告。
運ちゃんは、くわえてたタバコを「怒られるしな」と言いながらゴシゴシと消し、出発進行いたしました。
 
「どこに行かれんの?」
 
運ちゃんは年の頃50後半~60歳といったところでしょうか、ベテランらしい余裕を醸し出しておられましたよ。
 
「ちょっと実家に…」
「ほぅ、実家どこ?」
 
結構、話し好きな運ちゃんのようです。
 
「山口なんですよー。」
 
私は、ニコニコしながら答えましたがな。

 

 

「おお、じゃぁ、おとうちゃんとおかあちゃんが待ってるわけやなぁ?」
「いや、実は友達に会うのがメインなんですけどねぇ。」
「友達かいな!」
 
実は、高校の同級生だった友達が、シアトルから帰ってきてましてね。
滅多に会えるもんでもないし、急遽帰ることにしたんです。
だからまぁ、一泊二日でちょろっと…。

 

などと、聞かれてもないのに、なんだか話してしまいました。
 
「シアトルって言ったら、マリナーズやなぁ?」
「そうそう、イチローとかのねぇ。」
「ほーーっ! なんや、向こうで結婚したんか?」
「そうなんですよ。旦那さんも向こうで知り合った人でねぇ…。」
「国際結婚やなぁ~。」
「ねぇ~~。」
 
とかなんとか会話をしてましたら、まぁ、会話が途切れる時間ってのは、会話の中では必ずあるもので。

 

しばらく…そうですねぇ、西大路からリサーチパークの辺りまででしょうか、車の混み具合を気にしつつ、友達の話から離れること、数分。
 
「で、向こうに行ってどれくらいになるんや?」
「え?」
「あんた、いつごろ向こうに行ったんや。最初は言葉も通じんかったやろう。」

 

………ん?
 
 
 
あれあれあれあれ? 
 
 
 
……あれあれあれあれあれ

 

 


いつの間にか、おじさんの頭の中で。

私がシアトルに住んでいる、ということになってしまったようですよ。
 
 
なぜ。
 
私の説明、そんなになってなかったかしら、なってなかったかしら、そんなことより。

 

……さて、どうする。



本来なら訂正してお詫びをするべきなのかもしれませんがね、いや、あたしゃ間違ったことは言った覚えはないのですから、まぁおわびは必要ないとしてもね、とにかくね。

 

この運ちゃんに、一から説明し直すの、しちめんどくせぇ…! 
 
果たして、めんどくさくても、わかってもらえるように最初から説明するべきか。
それとも、このまま…適当に話を合わせて終わらすか。

 

あたしだってね。
無駄にウソツキなんかになりたかありません。

 

一瞬迷いはしたものの、決めました。

 

 

乗っかることに、決めました。



この状況、楽しむだけ楽しもう、と。



以下、私の腹黒さ加減を示すために私の台詞を黒太くしてお送りいたします。



「あっちは、寒いんやろう?」

「そうですねぇ、ここよりは随分…。」

「そうかぁ。日本食とかはあるんか?」

「あぁ、ありますよー。大抵の物は。」

「ほぅかぁ! そんなもんなんやなぁ。」

「まぁ、値段は高めですけどねぇ…。」

「ほぅ、そりゃそうやろなぁ、輸入とかせなあかんもんなぁ。」

「そうなんですよねぇ。買えない額じゃないんですけど、納豆が500円とか…。」

「はぁ~~~! そんなにするんか、納豆が!」



まぁ、適当に具体例を挙げ、それらしい話をしつつ。
目下のところ、私が一番気にかけなければならないポイントは、ただ1つ。

 

そう、英語です。

 

「ちょっとしゃべってみて」なんて言われたらアウトですからね。

 

そうならないようにならないように、言葉の端々に「まだ行ったばかりでほとんど英語を話せない私情報」を散りばめながら話をすることに心を砕きました。

 

その甲斐あってか、
 
「言葉もわからん所に行って大変やなぁ。」
 
という雰囲気に持っていくことに成功。




やれやれ、と思っていた頃に、めでたく京都駅に到着いたしました。



そして私は、タクシーを降りる時には、
 

シアトル在住で、カナダ人と結婚して、子供はまだいない、城南?出身の女
 
 
という、実際にシアトルに住んでいる友達ともかけ離れたプロフィールの持ち主になり。

 

「がんばりやぁ~。」


という、タクの運ちゃんの言葉を背に、山口に向かったのでした。





ごめん。
ごめんよ、健三ちゃん。 (タクの運ちゃんの名前)
 
納豆、500円じゃないかもしれないさ。
300円くらいかもしれないさ、友達に聞くのも忘れちゃったわ、今度聞いとくわ、
おほほおほほほほ!



タクシー万歳タクシー万歳。




 

城南って、どこよ?
ご利用まことにありがとうございます。