むし歯の歴史
割と数年ぶりに通うことになりそうです。
面白くねぇなぁ、引っ越して一年経ったけど、この道は初めてだねぇ、と歩いていると、頭の中では
ん 飲めっと~言われってぇ~素直に~飲んんだ~
って流れ始めてですね。
あぁ私はこんなにも逃げたいのか、歯医者から。
と、しみじみしながら、徒歩5分の歯医者まであっという間に着いてしまいました。
歯医者さん、綺麗なトコでしたよ。
スリッパは常に殺菌装置の中に入っているようですよ。
コンビニのドリンクを冷蔵庫から取り出すように、スリッパを装置の中から取りだして履きました。
そして何年かぶりの、歯医者の椅子へ。
あの、ハイ倒しますね~の椅子へ。
ちん。
って大人しく座りましたよ。
予定通り 「ハイ倒しますね~」 と来たもんだ。
ドキドキするけど、予定通りさ、へっちゃらだいっ!
だいっ!
だ……
ちょ、どこまで…!?
なぜだか、完全に頭が下になる位置まで倒されたんですけど、最近そういうもんなの?
頭に血が上るんですけど。
危なくないですか。
ねぇ。
アレで良いんですか。
だんだんとピンク色になっていってるであろう私の顔にはお構いなしで、とりあえず検査です。
「んー。虫歯、ありますね。」
はい。
「あぁ、ここが取れたんですね。」
はい。
「基本的に、虫歯だの歯周病だのっていうのはね。」
はひ。
「菌をちゃんと取ってれば、絶対にならないもんなんですからね。」
ぴゃい…。
だから、歯医者嫌いなんですよっ。
思えば、私の歯医者の記憶は、例の椅子から逃げ出したところから始まります…。
3歳くらいだったのかしらねぇ…。
座ったから、周りも油断したんでしょうね。
そこから私は、飛び降りた!…………ような気がする。
その後あったことは、覚えていませんよ!
それから帰り道に、ガム買ってもらいましたよ!
でも私の好きな黄色いガムがなかったから梅味だったわよグリーンガムなんてお呼びじゃないのよーっ!
クイッククエンチは革命でしたね。
レントゲンを見ながら、先生は言います。
「本当は、この深さまでちゃんと治療出来てないといけないんですよ。」
「でも、その腕がない歯医者が多くてね。」
「なかなかいないんですよ、日本には。」
「まぁ、安いのよ。難しいのに、これっぽっちの報酬にしかならないから、誰もやらない。」
「適当にやって、数こなして稼いでるんですよね。」
「ほら、私がやったのは、こんな風に、奥の方までちゃんと治療出来てるでしょう?」
「日本では、こんなことしたって全然儲からない。アメリカは違うけどね。」
「アメリカは、腕の良い歯医者がちゃんといる。そのかわり、めちゃめちゃ高い。」
「金を出せば、ちゃんとした医療が受けられる。お金がないと一切受けられないけどね。」
わぁ、なんてグローバルな愚痴。
「さて、どうするかなぁ…。」
どうしましょうね…?
「ちょっと時間が掛かるだろうけど、やる?」
「おねがいひまふ…。」
そのために来たんです…。
でもまぁ、確かに、根っこの治療の時って、お金かかんないよね。
根っこの治療ってのは、仮の蓋を取って、針金ブラシみたいなので、神経取った歯の中をゴシゴシッゴシゴシってして、薬入れて、また蓋する、アレのことだと思うんだけど。
あれの時って、ほんとに安い。
「今日は120円デス」 チリチリチーン♪
なんてのが、ざら。
さあ金を払おう、と千円札出して構えてたのに、慌ててガマ口を開けなきゃならない、そんな感じ。
あれの時に、やたら金を取るところはボッタクリだと、1つの判断基準にすらしてたけど。
まあ……それがボッタクリであることには変わりないのかもしれないが、そもそも適当だったのね…。
あ、そう…。
まあいいさ。
腕があるなら、話が長いのも我慢するさ…!
歯茎の検査なんて、やったことなかったし。
針金みたいのを歯の根元に刺して、どれくらいの深さまで入るかを測定。
それで歯周病かどうかをみるの。
「こういうの、初めてやってもらいました。」
って言ったら、少し嬉しそうでした。
「でしょう? こんな基本的なこともやらないんだよねぇ、他んとこは!」
なんかいろいろ…思うところがあるのね、先生。
金さえ出せば確実な医療が受けられるアメリカ…ほどほどの治療をほどほどの値段で受けられる日本……どっちがいいんでしょうねぇ…とかなんとか考えながら帰る道すがら、気付きました。
そういや今日、歯ブラシ買っただけで終わり…?
予約がいっぱいらしくて、来週の金曜日だってさ、次。