国語の時間
安住先生です。
安住先生ですよ。
今は、国語の時間です。
なのに私は、完全に横になって毛布にくるまり、寝ています。
毛布が悪かったのでしょう、さすがに先生に怒られ、本で尻を2回叩かれてしまいました。
大人しく授業を受けているし、このまま時間も過ぎ去ろうと思っていたら、そうはいかず。
安住先生は、そうっと切れていました。
ありゃ。
安住先生は、なんだか落ち着きなく次々と生徒を指名していき、いよいよ私の番が。
観念して身構える私に、安住先生は言いました。
……。
…お母さん風っすか!?
意外な内容に、私の心の準備は全て吹き飛んでしまいました。
あぁ、可哀想な私の心の準備。
お話の内容は、小さな魚が冒険をするという可愛らしいモノ。
これを、母親の視点で読めということなのでしょうか。
それとも、寝る子に絵本を読み聞かすように読め、ということなのでしょうか。
それとも、「お母さん風に」というのは、私の空耳だったのでしょうか。
ええっと、え、今どこ?
(チィっ!斜め読みのツケがこんなところで。)
よく見たら、その教科書、文章の横っちょに英語がフリガナのように振ってあります。
どうも、その英語をお母さん風に読まなければならないらしいのです。
…なんですか、その無情なハードルの上げ方は。
今、国語の時間ちゃうんかいっ。
そう言いたいのは山々ですが、とりあえず何とかしなければ、と教科書をめくる私。
が、どうもこの教科書が、変。
ページが順番通りじゃないんじゃないの?
私は、何度も何度も教科書をめくり、やっと気付きました。
こいつ、中に袋とじが3つも入ってて、それを取ってからでないとページが綺麗に並んでない本なのです。
出番は他の人に回り、私の番は終わってしまいました。
屈辱…!
むぅ、私が寝ていたばかりに皆に申し訳なーい。
やっちゃったなぁ~とか思っていると、チャイムの音が。
あ、終わり? と、少しホッとする私。
すると、教壇に戻った安住先生が言ったのです。
物凄い早口で。
「○○と○○、献血っ。」
……今、私の名前出た?
と、隣のミヨちゃんに聞いてみると、彼女はこっくりと頷きました。
まぁ、ペナルティを受ける人間がいるとすれば、私が免れられるはずもなく。
切れられたときはチョット焦ったが、ペナルティに献血って、なかなか面白いじゃないか。
それに何より。
と、起きた頭で、布団の上にて胡座をかきつつ思いました。
ありがとう、安住先生。 さようなら、安住先生。
見覚えのある、黒板、机、クラスメート達の位置。
えぇ、ございましたよ、それは地理の時間。
地理ってね。
が、毎回寝るもんだから、先生側も対策を立てるようになってきて、ですね。
「じゃぁ、ここを……○○さん。」
って、「じゃぁ」もヘッタクレもねぇだろうがよ!ってくらい、必ず、私を指名するのです。
だからドリーネのことについちゃ、ちょっとウルサイわけがねーだろうがよ、オイ。
ほんでね、いつものように教科書を読んでいた時に「~~は、△△に貢献した。」ってぇ文章があって。
ちなみに地理の先生、私が献血って読み間違えたとき、鼻で笑ったー。
絶対、忘れなーい。