ひさごに思う。
去年の今頃だったかしらねえ。
北海道から那の字の付く人が京都に来たのは。
せっかくだから何を食べよか何がええ、みたいな話をしたら、出てくるものが。
ラーメン。
親子丼。
ってもう、全部てんやもんやんみたいなメニューばっかり出してくるわけですよ。
ホントそういうの好きよねえ、って言ったら。
「ナナ公さんにも『好きなものが貧相だね』って言われました。」 って。
なんかこう、相が貧って、すごい言葉よね。
家相にしても手相にしても。
家相にしても手相にしても。
でもまあ、京都の親子丼っていったら、確かに、ちょいとしたものでね。
有名処が何ヵ所かあったりするのですよ。
ほんじゃ親子丼はどこがいいんだい、と聞いたら。
「安住さんが食べてたやつ。」
ふむ。
最近見てないわー、ぴったんこ。
ま、あのテレビ局の下調べなんて、いかにも薄そうだし、ひさごと鳥岩楼あたりを出してみたら、
案の定、ひさご。
やあ、ひさごの親子丼は本当に美味しいのよ。
行列必至だけど行く価値有り、ってなことで、ひさごに行きましたよ。
そしたら、もっと案の定、行列。
でも、お店もちょっとだけ広くなってて、これならまあ、と思っていたらば。
どうも昔の行列と様子が違う。
よくよく見てみたら。
なんと、修学旅行生が列に加わっておるのですよ。
はっ、はっ、はっ、は。おい、おい、おい、オイ。
最近の修学旅行生は、大抵4、5人のグループで行動すんのよね。
その4、5人が一気に数に加わるのだから、行列としては、えらいダメージなわけです。
修学旅行っちゅうもんは、さ。
修学旅行っちゅうもんは、さあ。
その辺に集まって冷たいもんでも食べときゃええじゃろうがね……!
なんかあの、チャッカマンで火付ける1人鍋で充分じゃろうがね……!
本気で呟いてしまいましたわよ、その場で。
ちっ。
マクドナルドでも食っとけよ。
ほら。
おたくらの地元、マクドナルドがあったりなかったりするんでしょ、どうせ。
珍しいでしょう?
珍しいんでしょう?あのMのマークが。
あれが包まれてる紙が、かしゃかしゃ音立ててるだけで若干興奮したりするんでしょう?
……。
私は、そうだったの。
私のときは、そうだったのよっ。
私のときは、そうだったのよっ。
昭和の50年代後半。
場所は山口。
場所は山口。
となると。
マクドナルドなどというものが物珍しいものであること、これはもう、どうしたって変えられない事実。
マクドナルドだけじゃあないよ。
でも、ロッテリアはあった。
徳山に。
徳山に。
(電車で行かないとね、行けない町なのね。映画を見るのもね。徳山まで電車でね。)
サンパチトリオもあったんだから!
でも、サンパチトリオのシステムをよく知らなかったナニガシが、普通にハンバーガーと飲み物とポテトを頼んで500円超えて、そのせいで帰りの電車賃が足りなくなったりしたんだから!!
そんな時代だったんだから!!!
アタシじゃないわよ。
アタシじゃぁないわよ。
私は、その話を聞いて、本気で「ああ…!気を付けなきゃ…!」と思って、ロッテリアで買い食いするときは、ものすごい神経使ったから、アタシは、やってない!
でもまあ、いまだに私の中でロッテリアの地位が低いのは、おそらく当時の希少性の薄さがそうさせているに違いないのよね。
って感じ。
んじゃ、ついでに。
どれだけ私の子供時代がマクドナルドから遠かったか、その証明のため2つほどエピソードを紹介しましょうか。
もう十分かもしれないけれども、紹介しましょうか。
その①
マクドかマックか論争。
関東はマック、関西はマクドでクのところにアクセントな、みたいな話ありますが。
「マクドナルド」だったっつーのよ。
略すほど身近じゃなかったっつーのよ。
その②
中学の修学旅行のとき。
ジャージで新京極を自由行動できる時間があったんだけど、その間。
ジャージで新京極を自由行動できる時間があったんだけど、その間。
マクドナルド禁止令発令。
マクドナルドを食べると不良になる。
そんな概念が大人の中に確実にあったと思われる。
そんな概念が大人の中に確実にあったと思われる。
仕方ないわよね。
まあ。
そりゃまあ確かに、マクドナルドよりは、ひさごの親子丼だわね。
よかったね、君ら。
時代が変わって、よかったね。
なんて思いながら、つい冷たい目で見ちゃう私を許してね。
ああ、いいよいいよ、気にしないで。
そんな別に、面白こととかしようとしなくていいから。
全然、いいから。
なんもしなくていいから。
そこで大人しく待っといてちょうだい。
で。
待ってる中学生は、というと。
おおむね大人しく待っている……まあ五月蠅いが、まあ、ちゃんと順番を守って待っている、
まあ当然だが。
が、ちょいちょいと中学生らしい行動を目にするわけです。
ぬーが彼らを見ながら言いました。
「中学生って、あんなにアホやったっけ。オレも、ああやったんか……。」
那央さんは、丸い頭をさらに丸くして、中学生の一挙手一投足に悪い笑みを浮かべていましたよ。
でも、そんな彼女の見た目は、どうかすると中学生。
そうやって私らが中学生を観察している間に、店側は実にうまく中学生を奥の席にまとめていたねえ。
慣れとるな、ひさご。
でも、まだ来るのよねー中学生。
どんどん来るのよねー。
んで、当然のことながら同じ中学校の人間だったりするわけよ。
んで、待ってるやつが、食ってるやつにちょっかいを出すわけよ。
真ん中の指を突き立てたりして。
わー。
久しぶりに見た、それやる人。
それこそ中学校以来かも。
「ねえねえ、今、外の子がふぁっきゅーをやっていたよ。」
と報告すると、頭を抱えて机にうっつぶす、ぬー。
そ、そんなにツボだったのかしら……?
いや、待てよ。
いやいやいやいや、そういえば……。
アレをやってるアナタの写真を、私は見たことがありますよ。
ありますよ。
ありますよ、アナタ。
高校生でしたよね、あの写真のアナタ。
撮られる写真、撮られる写真、ほぼすべてでアレを
やっていましたよね、アナタ。
ついでに鶴太郎に似てましたよね。
きゃー。
きゃー。
きゃー。
恥。
ザ☆恥。
中学生ってあんなにアホやったっけ?
うん、きっとそうだったんじゃなぁい?
私が密かに悪い笑みを浮かべていると、おや。
せっかくの親子丼なのに食の進まない中学女子が1人いますよ。
なんか、ちびちび食べてんなあ、と思っていたら。
他の生徒に「おいしい?」と聞かれ。
「ん? 普通~。」
と、答えやがりましたよ。
やな感じー。
いるのよねー、ああいう女子。
何かひと言、言わないと気が済まないっていうかねー。
って、アタシだ。
中学当時の私が、いかにも言ってそうな台詞だわ、イィィィィヤァァァァァ……ッ。
今度は私が現実逃避の準備に入る番。
が、うまくいかない。
だって、よく似た人間が、すぐそこにいるのだもの。
いやぁ……言いそう、ほんっと言いそう、当時の私。
顔まで似てるような気がしてきた。
ホンットイヤスギアアタスケテ-デキスギク-ン……。
ホンットイヤスギアアタスケテ-デキスギク-ン……。
そんな負のループから救ってくれたのは、他でもない、ひさごの親子丼でした。
ああ。
久しぶりに食べたそれは、変わらない美味しさでした。
本当に美味でござった。
結構な量なのに、つい最後の米ひと粒までたいらげてしまう、このお味。
すばらしい。
まあね。
そうよね。
不味いもん集団で食べるよりか、こういう美味しいもん食べた方が、良い思い出になるってもんよね。
うん、そうよね。
インフルエンザのときは、タクシーの中から眺めるだけだったなんて、気の毒な子達もいたらしいし。
できるだけ楽しまなきゃね。
……。
……。
んーでも、やっぱり、ごめん。