脇シューの行方
風呂上がりに、ひと吹き。
脇という場所からしてデリケートなので、シューの冷たさが身に凍みるらしく、身悶える旦那。
さあ。
さあ、どうなのだ、効き目は。
裏の説明書によれば、「朝一回お使いいただくと一日中快適です」とある。
その言葉、まっこと信じてよいのであろうなぁ~ぁぁ?
ともかく行ってくる、と旦那は会社へ。
今現在の旦那の脇は、えもいわれぬ「せっけんの香り」であるが、正直この匂いはいただけない。
せっけんの香りでなく、私の大嫌いな車の芳香剤系の臭いである。
「いってらっしゃ~い。ゴミ出しといてね。」
卓球の愛ちゃんもびっくりのステップで、旦那にゴミ袋だけを渡し、いつもより一歩下がってのお見送り。
あとは、帰ってからのお楽しみだ。
今回使用しております、この脇シュー。
銀イオンが入っているという、割と科学的に信頼できそうな謳い文句が付いている。
臭いの元は基本的に細菌が原因だそうで、銀イオンはその細菌の増殖などを抑えるらしい。
なるほど、効きそうだ。
…ん? いや、それより。
臭ってる旦那の脇って、いったいどうなってるんだ?
細菌が繁殖してるってことは、だ。
たとえば、旦那の脇を綿棒で軽くこすって、シャーレの寒天にそれを塗って培養なんかしたりすると、ものすごい嫌なコロニーがたくさんできるって事なのか?
そうなのか??
そう、なの、か???
……。
思ってた以上に嫌な状態じゃないか、それは。
思ってた以上に旦那の脇は、ピンチなんじゃないのかい???
ぅおいおい~、旦那の脇~、大丈夫か~。
脇と細菌と旦那について、さんざん考え抜いてたころに、ご本人が帰宅。
さっそく、脇ちぇぇっくっ。
聞けば、昼頃などは随分マシかも、と思うときもあったそうだ。
へぇ、そうなんだ。
効いてると言うから、思いっきり脇に近づき、思いっきり臭いを吸ってみる。
「あ、あぁ、効いてるかも…、!!んぅぬふぅっへッッ、んがっ!」
…いや。
思いっきり吸った私が…、私が、悪かったんですよ、きっと…。
はぁ。
効き目に関して結論を言わせていただくと、やらないよりはマシ、といったところか。
微妙に残ったせっけんの香りで、一応ガードはされている、脇臭。
しかし、そのガードは非常に薄く、2枚重ねのティッシュペーパーを一枚に分けた、一枚分くらいしかない。
その向こうには、確実に、確実に、いつもの脇臭達がしっかりと潜んでいる。
なんというか、私のただでさえ量の少ない「やる気」とか「気力」とか、そういうものを、本当に根こそぎ消し去ってしまうねえ、この脇臭は…。
旦那がシャワーを浴びている。
見れば、真っ先に脇を洗っているではないか。
もっしゃ、もっしゃ、と脇を揉む旦那の背中を見て、思う。
がんばれ、旦那。
愛してるよ。